三田健志 1979年広島に生まれた三田健志は、高校時代まで広島で過ごし、高校卒業後に多摩美術大学に入学し、大学院では美術研究科絵画専攻(版画)コースで研究を重ね2004年に修了した。 生まれ育った広島で過ごした幼き頃は、誰もいなくなった放課後の校庭や公園などの空虚な空間を眺めること、また弱いとされる生き物へ眼差しを注ぐことを好み、いつまでもそれらの光景を眺めているような幼少年期を過ごした。 大学院修了後は、母校の多摩美術大学で助手として勤務しながら制作活動を続け、2008年に東京銀座(養清堂画廊)で初の個展を開催する。その際には、写真と版画の技法を用いた作品を発表し、儚きものへの眼差しを湛えた独自の視点と構図を持った数々の作品は、初個展にして高い評価を得た。 三田は、主に写真の技法を取り入れて作品制作を行っているが、制作された作品は、所謂ストレートフォトではなく、異なる時間や空間を一つの画面に集約し、実際には存在しない時空間世界を表した作品を制作している。三田自身の言葉を借りれば、『写真家が「花」や「動物」をとるのと同じ仕草で、私は「写真―つまりだれかの眼差し(vision)」を撮影しているのです。これらの作品を通して、私は概念的で間接的な体験と、身体を通した直接的な体験の間(あわい)にあるものをつかもうとしています』。 また関連した近年の活動としては、「経験」を巡る考察を基軸に展開し、「経験するもの」を象徴する存在として架空/実在の冒険家を設定し、彼/彼女の旅の軌跡を辿る形式の作品を多く発表している。個人で発表を続けるほか、ユニット<構想計画所>としての活動も多く、近年の発表に「無人= Atopia」(2015年)、「疑存島―他者なき世界の地図作成法―」(2014年)などがある。 このような独自の制作技法とスタイルを基本としながら(写真をベースにしながらも写真ではない)、写真の世界からも高評価を得て、2014年にTokyo Front Line Photo Award/グランプリ受賞、2015年はCanon写真新世紀/優秀賞、 2016年はJapan Photo Award / IMAエディトリアルディレクター賞を受賞し、確たる構築された世界感を持つ作品に多方面から注目が集まっている。 |